Buddhist Deity Encyclopedia
仏様辞典
如来・菩薩・明王・天部 — 日本仏教の仏様を網羅的に解説
全42尊を収録
仏様とは
お寺を参拝したとき、本堂に安置された仏像に手を合わせたことがある方は多いでしょう。しかし、その仏様がどのような存在で、どのようなご利益があるのかをご存知でしょうか。
仏教には多種多様な仏様が存在し、大きく「如来」「菩薩」「明王」「天部」の四つの階層に分けられます。悟りを開いた最高位の「如来」、衆生を救うために修行する「菩薩」、忿怒の姿で煩悩を打ち砕く「明王」、そして仏法を守護する天界の「天部」。それぞれに個性的なお姿とご利益があります。
この辞典では、日本の寺院でお目にかかれる主要な仏様を網羅的に紹介します。お姿の見分け方、ご利益、真言、ゆかりの寺院まで詳しく解説していますので、寺院巡りのお供にご活用ください。
仏様の四つの階層
如来
(8尊)釈迦如来
如来しゃかにょらい・Shakyamuni
仏教の開祖であり、実在した歴史上の人物。悟りを開いて「仏陀(ブッダ)」となり、その教えが仏教として世界中に広まった。
阿弥陀如来
如来あみだにょらい・Amitabha
西方極楽浄土の教主。無限の光と無限の寿命を持ち、「南無阿弥陀仏」と念仏を唱える者を極楽浄土へ導く。浄土宗・浄土真宗の本尊。
大日如来
如来だいにちにょらい・Mahavairocana
密教における最高仏。宇宙そのものを体現する根本仏であり、すべての仏はこの大日如来から生まれたとされる。真言宗の本尊。
薬師如来
如来やくしにょらい・Bhaisajyaguru
東方瑠璃光浄土の教主。十二の大願を立てて衆生の病苦を救う医王仏。病気平癒・健康長寿のご利益で広く信仰される。
毘盧遮那仏
如来びるしゃなぶつ・Vairocana
華厳経に説かれる宇宙の真理を体現する仏。蓮華蔵世界の中心に座し、無数の光を放つ。奈良の大仏として最も有名。
阿閦如来
如来あしゅくにょらい・Akshobhya
五智如来の一尊として東方を司る如来。名は「動じない者・揺るがぬ者」を意味し、あらゆる物事をありのままに映し出す大円鏡智を体現する。
宝生如来
如来ほうしょうにょらい・Ratnasambhava
五智如来の一尊であり、南方を司る如来。あらゆる存在を平等に見る智慧である平等性智を体現し、衆生に福徳と財宝をもたらす仏として信仰される。
不空成就如来
如来ふくうじょうじゅにょらい・Amoghasiddhi
五智如来の一尊として北方を司る如来。名は「空しからず成就する」を意味し、あらゆる行為を悟りの活動へと転化する成所作智(所作成就の智慧)を体現する。
菩薩
(14尊)聖観音
菩薩しょうかんのん・Avalokiteshvara
聖観音(しょうかんのん)は、観音菩薩の根本形であり、あらゆる衆生の苦しみの声を聞き、慈悲をもって救済するとされる菩薩である。インド仏教を起源とし、東アジア全域で広く信仰され、日本においても飛鳥時代から現代に至るまで最も親しまれてきた仏尊のひとつである。
千手観音
菩薩せんじゅかんのん・Sahasrabhuja
千本の手にそれぞれ眼を持ち、あらゆる衆生をもれなく救済するとされる観音菩薩の変化身。無限の慈悲と救いの力を象徴する、日本で最も信仰を集める観音のひとつ。
十一面観音
菩薩じゅういちめんかんのん・Ekadashamukha
十一面観音は、頭上に十一の顔を持ち、あらゆる方向を見渡してすべての衆生を救済する菩薩である。その広大な慈悲の力によって、現世における諸々の苦難を取り除くとされる。
如意輪観音
菩薩にょいりんかんのん・Cintamanicakra
如意輪観音は、あらゆる願いを叶える如意宝珠と、煩悩を打ち砕く法輪を持つ観音菩薩の一尊である。衆生の苦しみを取り除き、福徳と智慧をもたらす慈悲深い存在として広く信仰されてきた。
馬頭観音
菩薩ばとうかんのん・Hayagriva
六観音の中で唯一、忿怒の相をもつ観音であり、憤怒の力で煩悩を打ち砕く。馬をはじめとするあらゆる動物の守護仏として、古来より深く信仰されてきた。
不空羂索観音
菩薩ふくうけんじゃくかんのん・Amoghapasha
決して外れることのない聖なる羂索(投げ縄)を手に、すべての衆生を漏れなく救い取る観音菩薩。「不空」とは「空しからず=必ず成就する」を意味し、その慈悲は一切の存在に及ぶ。
地蔵菩薩
菩薩じぞうぼさつ・Ksitigarbha
子供・旅人・亡者の守護者として知られる菩薩。日本全国に石像が立ち並ぶ、最も身近で広く民衆に愛された菩薩である。
文殊菩薩
菩薩もんじゅぼさつ・Manjushri
仏教における智慧の菩薩であり、あらゆる菩薩の中で最も優れた知恵を持つとされる。「三人寄れば文殊の知恵」ということわざの由来となった存在で、学業成就や合格祈願の本尊として広く信仰される。
普賢菩薩
菩薩ふげんぼさつ・Samantabhadra
修行と実践を司る菩薩であり、白い象に乗った姿で知られる。法華経において特に重視され、すべての衆生の修行を助け、悟りへと導く存在とされる。
弥勒菩薩
菩薩みろくぼさつ・Maitreya
釈迦の入滅から56.7億年後にこの世に現れるとされる未来の仏。現在は兜率天で深い瞑想に入り、衆生を救う時を待ち続けている。
虚空蔵菩薩
菩薩こくうぞうぼさつ・Akashagarbha
虚空(宇宙空間)のごとく無限の智慧と慈悲を蔵する菩薩。若き日の空海が超人的な記憶力を得るために虚空蔵求聞持法を修したことで知られる。
勢至菩薩
菩薩せいしぼさつ・Mahasthamaprapta
阿弥陀如来の右脇侍として仕える菩薩で、智慧の力を象徴する存在。阿弥陀如来・観世音菩薩とともに阿弥陀三尊を構成する。
日光菩薩
菩薩にっこうぼさつ・Suryaprabha
日光菩薩は薬師如来の左脇侍として、右脇侍の月光菩薩とともに薬師三尊を形成する菩薩である。太陽の光を象徴し、病を癒し、苦しみや無知の暗闇を照らし出す慈悲の力を持つ。
月光菩薩
菩薩がっこうぼさつ・Chandraprabha
薬師如来の右脇侍として日光菩薩とともに薬師三尊を形成する菩薩。月の清涼な光のごとく、苦しみを和らげ心に安らぎをもたらす慈悲の存在である。
明王
(7尊)不動明王
明王ふどうみょうおう・Acala
最も重要な明王であり、大日如来の忿怒身。右手に剣、左手に羂索を持ち、煩悩や悪を断ち切り、衆生を守護する。
降三世明王
明王ごうざんぜみょうおう・Trailokyavijaya
欲界・色界・無色界の三世を征服する明王であり、あらゆる煩悩と障害を打ち砕く強大な力を持つ。ヒンドゥー教の大自在天(シヴァ神)とその妃・烏摩妃を踏みしだくことで、仏法の絶対的な優位を示す。
軍荼利明王
明王ぐんだりみょうおう・Kundali
全身に蛇を巻きつけた忿怒の尊格であり、あらゆる障害や悪を打ち砕く力を持つ。宝生如来の忿怒身として、密教における五大明王の一尊を担う。
大威徳明王
明王だいいとくみょうおう・Yamantaka
水牛に乗り、六面・六臂・六足という唯一無二の姿を持つ明王。ヤマーンタカ(死を滅ぼす者)の名が示す通り、死神ヤマ(閻魔)をも征服する、死そのものを超越した存在である。
金剛夜叉明王
明王こんごうやしゃみょうおう・Vajrayaksa
金剛夜叉明王は、ダイヤモンドのように堅固な力を持つ夜叉の王であり、五大明王の一尊として北方を守護する忿怒尊である。不空成就如来の教令輪身として、あらゆる悪業と煩悩を金剛の力で打ち砕く。
愛染明王
明王あいぜんみょうおう・Ragaraja
愛欲や煩悩を否定せず、それをそのまま菩提(悟り)へと転換する力を持つ赤い明王。恋愛や縁結びの神として広く信仰されるとともに、密教における愛染法の本尊として重んじられる。
孔雀明王
明王くじゃくみょうおう・Mahamayuri
明王の中で唯一、忿怒相をもたず、穏やかで慈悲深い顔を持つ異色の尊格。孔雀に乗り、毒蛇を食らう孔雀の性質から、あらゆる毒・災厄・疫病を除く力を象徴する。
天部
(13尊)毘沙門天
天部びしゃもんてん・Vaishravana
毘沙門天はインド由来の武神・福神であり、四天王の一尊として北方を守護する多聞天と同一視される。七福神の一柱としても広く信仰され、戦勝・財福をもたらす神として武士から庶民まで篤く崇められてきた。
弁財天
天部べんざいてん・Sarasvati
音楽・芸能・財宝・水を司るヒンドゥー教のサラスヴァティー女神を起源とする女神。七福神の一柱であり、その中で唯一の女性神として広く信仰される。
大黒天
天部だいこくてん・Mahakala
大黒天は財運・五穀豊穣・台所を司る福の神。もともとはヒンドゥー教の猛々しいマハーカーラ(大黒天)として伝来したが、日本では打ち出の小槌を持つ温厚で福々しい姿に変容し、七福神の一柱として広く信仰される。
梵天
天部ぼんてん・Brahma
ヒンドゥー教の創造神ブラフマーが仏教に取り入れられた護法善神。悟りを開いた釈迦に教えを説くよう懇願した「梵天勧請」の逸話で知られ、常に帝釈天と対をなして仏法を守護する。
帝釈天
天部たいしゃくてん・Indra
ヒンドゥー教の神々の王インドラが仏教に取り入れられた強力な護法善神。東京・柴又帝釈天と映画「男はつらいよ」の舞台として広く親しまれている。
吉祥天
天部きちじょうてん・Lakshmi
ヒンドゥー教の女神ラクシュミーを起源とする美と幸福・繁栄の女神。仏教においては毘沙門天の妃として信仰され、福徳と美容の御利益をもたらす存在として広く崇拝されてきた。
韋駄天
天部いだてん・Skanda
仏教における最速の神であり、寺院の伽藍を守護し、仏法を守る護法善神。「韋駄天走り」という日本語表現は、韋駄天の俊足にちなんで非常に速く走ることを意味する。
金剛力士
天部こんごうりきし・Vajrapani
寺院の山門に安置される二体一対の守護神。阿形(口を開く)と吽形(口を閉じる)が対となり、邪悪な者を退けて仏法と境内を守護する。
四天王
天部してんのう・Chaturmaharaja
仏教世界を守護する四柱の方位神。須弥山の四方を守り、東に持国天、南に増長天、西に広目天、北に多聞天が配置される。
閻魔大王
天部えんまだいおう・Yama
冥界を統べる王として死者の魂を裁く存在。生前の行いを審判し、その功罪に応じて極楽や地獄への行き先を決定する。
持国天
天部じこくてん・Dhritarashtra
四天王の一尊として須弥山の東方を守護し、国土と衆生を守り持する守護神。乾闥婆(天界の音楽神)と毘舎遮(鬼神)を眷属として率いる。
増長天
天部ぞうちょうてん・Virudhaka
四天王の一尊として須弥山の南方を守護し、万物の成長と発展を促す天部の神。鳩槃荼(クンバーンダ)と薜荔多(餓鬼)を眷属として率いる。
広目天
天部こうもくてん・Virupaksha
四天王の一尊として須弥山の西方を守護する「広く見る者」の神。その異名どおり遍く世界を見渡す千里眼を持ち、龍(ナーガ)と富単那(プータナー)を眷属として率いる。